カケハシ、

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万物にエロスを見出す男・光長ゆうきさんが話す就活の本質とは?〜前編〜

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読者の皆様の中で、 19卒の就活生はどれほどいるでしょうか?

日本にはおよそ50万人の就活生がいます。売り手市場と言われる最近は、逆求人型の就活も増え、幅も広がってきました。

就活といえば、面接。たくさんの人事の方や管理職の方と面接をすることに苦手意識を持っている学生もたくさんいるでしょう。

九州大学の光長ゆうきさんはSoftBank株式会社への入社が決まっていますが、なんと最終面接で「万物はエロスを見出すこと」を特技として披露したそう。

【カケハシ、】は今回そんな光長さんに、「就活」を軸に話を聞いてきました。

 今回は2部に分けて、ご紹介いたします。

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光長ゆうき(ミツナガ・ユウキ)。株式会社SoftBank入社予定。1995年5月、福岡県北九州市生まれ。九州大学経済学部経営学科4年。大学1年生の時にラジオ番組のパーソナリティ兼プロデューサーを務め、視聴者数局内1位に。大学3年生の夏には、NHK経済産業省インターンに参加。「万物にエロスを見出す」ことを特技に就活に挑む。

<前編コンテンツ> 

1.ラジオ番組制作と「ものが広がる仕掛け」

2.原点になった小中高時代のヒットの体験

3.光長さんが捉える就活の本質とは?

 

1.ラジオ番組制作と「ものが広がる仕掛け」

-担当した番組を視聴数局内1位にしたとのことですが、どんな戦略があったのでしょうか?

 そもそもラジオとテレビの決定的な違いは、日常的かどうかです。テレビは普通リビングにあり、気軽に視聴できます。一方で現代におけるラジオは、目的性がないと電源を付けることがありません。

 それを理解した上で、最初に、人気番組が支持される構造を考えました。番組がコアな支持を呼ぶ理由は、「ひと手間かけてでも視聴したい」という視聴者の強い動機があるから。これを分解すると、①視聴者の知的欲求や娯楽欲求が満たされているか。②閉じられた視聴空間であるが故の連帯欲求や安心欲求が満たされているか。の2つだと考えました。言い換えると、「特定の人にとって特定のニーズを満たす、クローズドなコミュニティを形成すること」がラジオを聴いてもらえるポイントだと仮説を立てました。

 1番大事な戦略は「誰に向けて作るか」を決めることです。モノが広がる現象は、水滴が水面に落下し、波紋が広がる現象と似ています。落下の衝撃が大きいほど、外輪に広がり易いのと同様に、番組が視聴者に刺さる強さを決めることが重要だと考えました。その上で、目的を改めて整理し、目標を掲げました。

 ここは、広告主の方の要望を受けて、整理しました。目的は、学生の人生設計のヒントを提要すること。ターゲットは、キャリアについて迷いを抱えている中高生。目標は、3作品目までに視聴者数1000/1カ月の実現。

 実は、局内に視聴者数を測る概念と指標がなかったので、YouTubeに作品を載せて、視聴回数を計測しました。

 

-具体的には、どの様な仕掛け方をしたのでしょうか?

 先ほども言った通り、一番大事なのは誰に落とすかのターゲットの設定です。

 最終的に届けたいターゲットは「中高生」と依頼されましたが、北九州育ちの僕には、福岡市の高校生との繋がりがありませんでした。なので、最初は自分と境遇が近い、入学したての九大生のコミュニティへ作品を届けることに決めました。僕も含め多くの九大生が「何のために大学に来たんだろう?」と感じていて、そういう人達にこそ番組を届けたいと考えたからです。

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1人1人の製作陣の性格に応じて制作した収録台本。

 次に、人の心に響く企画(コンテンツ)を制作しました。 

 従来は堅い内容でしたが、起承転結の構成で学生向けの娯楽要素をプラスしました。自分に知名度がないので、ゲストを呼ぶことで企画を盛り上げました。予算は限られていたので、知恵を出して、お金以外の対価も提供しました。

 元々、中学・高校時代に人には言えない悩みを抱えて苦しかった時に、深夜のラジオ番組に救われた経験があります。リスナーとしてラジオに没頭していたので、細かい部分は、それまでの経験が活きました。

 最後に、制作したコンテンツの売り出し方を考えました。

 例えば、九大生という福岡でのブランドを活かした高校生向けの出張授業です。また、収録後にゲストの方と中心街を歩くことで、人だかりを作り、番組に出演した事実を自発的にSNSに投稿して頂くなどです。目標達成のために、工程を分解して、緻密にアクションを起こしました。

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天神の待ち合わせの定番「大画面前」にて、人だかりが出来た。

2.原点となった小中高時代のヒットの体験

-大学生になる前から「モノを広める」ということに興味はあったのでしょうか?

 小中高時代に共通言語を作ることで、クラス・学年中にヒットさせました。

 例えば、小学校の時に、下駄箱の悪臭という社会問題があったんですよ。何週間も上靴を持ち帰らない生徒がいたからですね。当時、皆が何となく感じていたけど、黙殺されていました。そこで小学生の僕は、「こんな悪臭の元は、人ではなく悪霊に違いない」と単純な発想して、その悪霊に「下爺裸(ゲジーラ)」と名付けました。すると、周囲の友達が面白がって、「下爺裸はお前か?」と擦り付けあいを始めました。結果、不名誉を被って指を刺されたくないという心理が皆に生まれて、社会問題が解決されたことがありました。

 この時初めて、共通言語の効果を体感しました。そして中学・高校で同様の体験をした結果、ネーミングが広まる要素は3つあると仮説を立てました。

1つ目は、皆にとって既知のものを組み合わせること。

2つ目は、対象の雰囲気や本質をうまく言い当てること。

 「下爺裸(ゲジーラ)」が、すんなりと受け入れられたのは、当時、映画「千と千尋の神隠し」が大ヒットしていたためです。登場人物の湯婆婆(ユバーバ)から発想したので、言葉が持つイメージを、皆が共有することができました。皆が何となく感じていることを察知して、言葉にする部分はセンスが問われる部分です。

 その後の経験でから、流行にのった人達が自力で創作する余地があれば、流行が自走し、根づきやすいことに気づきました。そこで、皆の創作障壁を下げるべく、言葉の構造を単純にしたのが3つ目です。

 例えば、ドラえもん堀江貴文さんを掛け合わせた「ホリエモン」などが代表的ですね。一過性で終わらず、今日まで言葉が根付いている点で、お手本です。このように、普段の生活では作品を作るだけではなく、広がる仕組みも設計して、仲間を内輪から外輪に巻き込んで一緒に楽しむことに没頭していました。

 これは高校卒業まで、家庭・学業・部活で課題を抱えて抑圧されていた中、苦痛を忘れて、精神を保つためでもありました。ただ、偏差値や部活動の実績が評価尺度である高校時代、こうした体験が大人に評価されることはありませんでした。

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Link&Motivation 夏のインターンRiseの際の写真

 3.光長さんが捉える就活の本質とは?

-かなり早い段階で内定をもらっていましたが、そもそも就活をしようと思っていたのでしょうか?

 背景は番組制作で感じた課題でした。大手局と比較した時の編集品質の低さ・プロの司会やゲストを招けないこと・数人で毎週ローテーションしていたのですが、自分の担当する企画は1作につき1~2カ月と制作頻度が遅かったです。

 原因は、事業として拡大できなかったからです。素人の視点だからこそ一般の人に寄り添える強みを体感できた一方で、番組制作やお金回りを、素人で回すことの限界を、身を持って感じました。そこで、自分の目標や適性を見つめ直し、世の中の仕組みを学ぶことで、自分が登る山を見極めたいと考えました。それが踏み切った理由でした。

 

-ラジオ番組などの経験を経て、就活をどのように捉えているのです?

 就活の目的は内定を得ることではないと思いました。内定を貰っても、その仕事に没頭できなければ、続かないからです。

 なので、自分がどんなことに没頭できて、誰の役に立てるかを見極めることが、本質的な課題と考えました。なので、就職は手段の1つだと捉えました。その上で、働く目的と手段を見極め易い時期が、俗にいう就活期間だと考えました。

 

-見極めるために具体的に、どう探したのでしょうか?

 最初に、学生と企業が選びあう構造が、番組と視聴者の関係と同じと発想しました。

自分を作品として捉えて、企業の皆さんに選んで頂く方法を考えたのです。

具体的には、番組制作と同様で3点に注力しました。

 

▽就活に置き換えた企画の論点

①特に、誰に落とすかを決める【ターゲットの定義】

⇒どんな人たちと働きたいか?

②人の心に響く作品を制作する【コンテンツの創作】

⇒自分の特性をどう捉えるか?

③制作物の売り出し方を考える【売り出し方の設計】

⇒コミュニケーション設計は?

 このために1番重要なのが、自己理解だと思います。

 これを何度も重ねた結果、僕が没頭できることは、「コミュニケーション設計を通じて、人を楽しませること」だと仮説を立てました。そして、幼少期からのずっとしてきた「万物にエロスを見出すこと」を特技としたのです。 

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経済産業省でのインターンで表彰を受けた

 

 

さて、前編はここまで、後編では、「万物にエロスを見出す」ことについて深く聞いていきます!

後編もぜひご覧ください!