カケハシ、

鹿児島と日本をつなぐ架け橋のような存在に。

いろんな関わり方があっていい。ゲストハウスを開いた石川姫歌さんが話す私の在り方とは?

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「ゲストハウス」という言葉を聞いて、「相部屋の安い宿」というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。しかし今や「ゲストハウス」とは「関わりを持つ場」として、まちの拠点となりつつあります。

地方創生やU・Iターン、インバウンドなどの国の方針とも相まって利用者だけでなく、開業する人も増えてきています。

 

山梨県都留市にも、昨年11月に古民家を改装したゲストハウスがオープンしました。

立ち上げメンバー5名は全員が都留文科大学生。

今回【カケハシ、】は、都留市にある「ゲストハウスゆかり」立ち上げメンバーの一人である石川姫歌さんにお話を聞いてきました。

 

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石川 姫歌(イシカワ・ヒメカ)。ゲストハウスゆかり 0期メンバー。1996年、石川県かほく市生まれ。都留文科大学 英文学科4年。大学3年生の時に「つなぐ〜都留で今しかできないことを〜」というサークルを立ち上げ、4年生になると「かえる舎」でインターンを始める。昨年11月に山梨県都留市に「ゲストハウスゆかり」をオープン。

きっかけは地域の人と大学生の接点をつくること。人と人のつながりはおもしろいう化学反応を起こす。 

-なぜゲストハウスゆかりを立ち上げようと思ったのでしょうか?

立ち上げメンバー5人がみんな旅好きでゲストハウスが大好きなんです。

大学2年生の時期に友達4人で長野県諏訪市にあるゲストハウスマスヤさんに泊まったことがあって、その時が初めてのゲストハウスでした。

夜になったらBARになって、地域の人がたくさん来て、ゲストとスタッフも一つの場所に集まって、偶然たまたま集まった人たちでおしゃべりをして、共通の話題で盛り上がったりして。すごくあたたかい空間で、ぎゅってなれる時間を過ごすことができたんです。

ゲストハウスの良さに触れて、ゲストハウスが大好きになって、いろんなゲストハウス巡りをしたいなあって。

その時にはまさか自分がゲストハウスをオープンさせるなんて思ってもなかったです(笑)。

あともう一つあって、たまたま大学の授業で山梨県の空き家問題について取り扱ったことがきっかけでした。

隣になる富士吉田市で、空き家を使ってイベントスペースやゲストハウスをしている地域おこし協力隊がいることを知って、私も「おもしろいことやれたらいいなあ」ってぼんやり思ってたんです。

そんな時に気づいたことが2つありました。まず、都留市に学生が自由に使える場所がない、そして地域の人と大学生の接点もない、の2つ。

ここをつくる時、“人と人のつながりが生まれて、新しい何かが生まれるきっかけになれたらいいなあ”って思って、「人と人のつながりをつくる」をコンセプトにしました。

 

-「人と人のつながりをつくる」場所にゲストハウスとしての機能を持たせたのは、ゲストハウス好きという以外には何か理由があったのでしょうか?

私は、長い時間をともに過ごせるのはゲストハウスならではだなあって思うんです。

ゲストハウスって同じ空間でおしゃべりして、同じ空間で泊まって、同じ空間で朝ごはんを食べてって感じで、長い時間を一緒に過ごすことができるんですよ。

できる限りの長い時間をいっしょに過ごすことで、その日にしか生まれないつながりだったり、その場でしか生まれない時間があるんです。

それが結果としておもしろい化学反応を起こすんじゃないかって思ってます。

 

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ゲストハウスゆかりで開催されたイベント。共有スペースはイベント時だけではなく、昼間は一般の人も自由に使うことができる。

-今4年生ということで、あと3ヶ月ほどで卒業ですが、ゲストハウスゆかりの運営体制はどのようにしていくのでしょうか?

私は卒業したら地元に戻って教師をしますし、今いるスタッフも一旦3月が区切りになります。なので、今後運営してくれる人を探さないといけないんですよね。

ゆかりの今後を考えた上で、変わらないことと変わることの2つがあっていいと思ってます。

ここのコンセプトである「人と人のつながりをつくる」はずっと受け継いでいって欲しいし、大事にして欲しい。変わらないでいて欲しい。

でも、スタッフとかは変わってもいいんじゃないかなあって。

ゆかりに関わるいろんな人たちが、いろんな形でゆかりをつくっていく。

ゲストもスタッフも変わっていくことで、その時その場所にしか生まれないものってたくさんあるし、それってすごくおもしろいと思うんです。

ここでスタッフをしていく内に、「あ、これやりたいな」って思うことってきっとたくさん出てくると思うし、その時に、ゆかりがあるからできないって形で諦めて欲しくない。やりたいことが他に出てきたら、その人の背中を押してあげられる場所になって欲しい。

実はゆかりのスタッフはみんなボランティアで給料とかないんです。

だからその分、自分の将来のためだったり、次のステップに進むための手段として使っって欲しいし、みんながそれぞれここに関わる価値を見出すかをみんなで考えていって、それに応じていろんな関わり方があっていいかなって思ってます。 

 

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ゆかりで開催されたコーヒーワークショプ

それぞれの「らしさ」を輝かせることのできる教育。

-卒業後は地元で教師をするということですが、ずっと教師という職業に憧れていたのでしょか?

小学校3年生の頃の先生が本当に素敵な人で、そこからずっと先生になりたいって思ってました。中学も高校も、先生になることだけを考えて、部活と勉強しかしてこなったんですよ。

でも大学3年生になる頃に、私は先生になりたかったんじゃなくて、小学3年生の頃の先生みたいな人になりたかったんだって気づいたんです。学校で見てきた先生の姿と、教育実習で関わる先生の姿にギャップがあったり、私がやりたい教育と今の日本の教育のギャップを知って、迷った時期がありました。 

それでも教師になる道を選んだのは、臨時採用って形で1年だけ教師をする関わり方ができたのと、私が大事にしている「大切な人を大切にする」ためにはどうしたらいいのかを考えたからです。

私のやりたい教育と日本の教育が違うからといって、やってみないとわからないじゃないですか。それに、小学校3年生の頃からの夢なので、一先ず私の夢を叶えてあげたくて。もしそれで、教師っていう職業が違うならまた考え直そうかなって。

自分の好きな道に進むことも大事だけど、私にとっては「大切な人を大切にする」ことの方がはるかに大事なんです。私にとって大切な人は家族。4年間都留市で好き勝手にいろいろしてきたし、家族と、そして自分も大切にする方法を模索したら、1年間は地元で一緒に過ごそうって思って。そのあとのことは、またその時考えようと思ってます。

 

-海外の教育をみてきて、そして日本の教育を踏まえた上で、石川さんのやりたい教育ってどんな教育でしょうか?

 私がやりたい教育は「それぞれのらしさを輝かせることのできる教育」です。

当たり前だけど、似てる人なんて一人もいないし、考え方や価値観が似ている人はいるけど、そのバックグラウンドはみんな違っていて、似ているようで違うっていう「らしさ」があるんです。

日本ほど、子どもたちが平等に教育を受けられる国はあんまりないと思っています。そして「みんな一緒」をとても大切にしている文化がある。けどみんな一緒だからこそ、逆に「個性」はあんまり発揮できないかもしれない。

逆に海外ではとても「個性」を大事にしている。人種も、文化も、宗教も違う人たちがひとつの学校っていうコミュ二ティに集まっているからだと感じています。

日本ていう子どもがみんな教育を受けられる国で、海外のように個性を尊重した教育ができたらいいなあって思ってます。

その人「らしさ」を子どもの頃から自由に表現できて、発信できたら、どんな大人になるんだろうってすごくワクワクするんです。

 

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ゲストハウスゆかりの立ち上げメンバー。

「何もないなら自分で作ればいい。」人に対しても、場所や地域に対しても、いろいろな関わり方を。

-ゲストハウスゆかりを開業して、来年は1年間教師になりますね。石川さんはどんな大人になりたくて、どんな社会を作っていきたいですか?

どんな人になりたいかでいうと、「大切な人を大切に」できる大人になりたいです。

私は何も人に与えられるものがないのに、私が私らしく居れるのは、人とのつながりのおかげだから。そのつながりを広げていって、私という存在が少しでも誰かの何かのきっかけになれたらいいなあって思ってます。


私には社会を変えたい!っていうような大きい思いはあんまりなくて、でもみんながちょっとした幸せに気づくことのできる世の中って、とてもハッピーだなあって思ってます。

毎日何かに追われて、自分にとって大切なものとか、日常に転がってるちょっとした幸せなことに目を向ける余裕がない人が多いんじゃないかなって感じていて。だからこそそういうちょっとした幸せに、「ああ、自分って幸せだな」って思える瞬間がみんなにあれば、それってすごく幸せな社会ですよね。

ゆかりでの生活を始めて、毎朝掃除が終わって、縁側に座ってお茶飲んでふと視線をあげると、めっちゃ天気良くて、そしてそよ風が吹くのを感じたら、めっちゃ幸せなんですよ。私自身がそういうのに気づけるようになったから、それが少しでも広まったらいいなあって思ってます。

 

-最後に、地方学生に伝えたいことを教えてください。

「何もないなら、自分でつくる」ていうのも一つの手段だよっていうのを伝えたいです。

世間的に枠とか限界とか選択肢って、どうしても他の人から狭められてしまうことだし、私たちは周りの目を気にしがちな日本人ではあるけれど、だからこそ、すごく不安かもしれないけど、ちょっと勇気を持って、「自分から一歩を踏み出す」ってすごく大事だなあと感じています。

一歩を踏み出したら、視点が変わって、世界が変わるんです。今しかやれないこともたくさんあるだろうし、やりたいことがない人でも、自分が好きなことをもう少し極めてみたり、ワクワクすることを大事にする、とか、そういうチャレンジをして欲しい。

私たちも、そういう人たちともっと交流して、一緒にワクワクしたいなあって。 

 

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編集後記

すごくあたたかくて、やわらかくて、けどとても芯が強くて、相手を受け入れる懐がすごくすごく深い人だなあって感じました。

自分は何も持ってないと話す石川さん。 けど彼女には人を惹きつけ、同じ空間にいる人を自然と笑顔にさせてしまうような、そんな魅力を持っています。

インターンやゲストハウスの開業を経て、いろんな関わり方に触れてきた石川さんだからこそ、いろんな関わり方を受け入れて、みんなの背中を押してくれることができるのだろうと感じました。

山梨県都留市にあるゲストハウスゆかり、皆さんもぜひ足を運んでみてください。

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